施工事例12の2 事務所・オフィスJIS鋼材建築用コンテナハウス(工場生産)
はじめに
前回の内容施工事例12の1 事務所・オフィスJIS鋼材建築用コンテナハウス(概要・設計篇・竣工写真)に続いて、中国大連にあるUni-Kon提携のコンテナハウス生産工場内で、今回の事務所オフィスJIS鋼材建築用コンテナハウスの生産過程をご紹介いたします。
1.不整形レイアウトの難しさと弊社の価値
今回の案件は、Uni-Konが相変わらず連携工場に先進的なコンテナハウスの生産方式プレカット方式を採用するのに必要な全部の加工図面資料を提供してまいりました。弊社のサポートしているプレカット方式は今回、いつものように工場の材料使用効率・生産効率をアップさせただけではなく、不整形レイアウトの連棟コンテナハウスであるため、その順調生産の確保にはこの生産方式の貢献はとりわけ大きいと言えます。
今回の案件のような不整形レイアウトの連棟コンテナハウスの一大特徴・難点として、各コンテナにおいて他のコンテナとの接続方向や排水方向がそれぞれ違うので、コンテナ主要構造部分(スケルトン)に共通できる構造パターンは存在しません。 このことの複雑さは、単純に柱部品の種類数を例として見れば思い知れます。
柱40本の内通用できるのは、わずか6本: 今回の7台コンテナハウス案件には合計して40本(6本x6台+4本x1台)の柱が使用されるのに対し、この40本柱の内、使用位置(前後左右)による向きの違い、内ダイヤフラム(梁フランジ接合部の増強板、これについてもっと知りたい方はこちら、健全なコンテナハウスを作るには)の数と位置、吊孔の有無と向き、ハンドホールの有無、側面別コンテナとの連結孔の有無と向き、トッププレート・ベースプレートの形状の違いなどの要素の組み合わせで、30種類以上の柱が存在します。40本柱の内、互いに交換通用できる柱はわずか6本しかありません。 これらの柱は当然、1本間違ったら、生産上取り返しのつかない大損失・大問題になりかねません。
弊社が採用するプレカット方式の根幹となる三次元設計モデルから生成した加工図面は人間頭脳で処理しきれない煩雑な細部を正確に反映してくれるので、上記のような設計スペックの「沼」を無事に渡るのに助けてくれるのです。
まあ、確かに、コンテナハウスはよく「ユニットハウス」とも呼ばれるように、その設計がもっと標準化、ユニット化、統一化されるべきだとお考えになるかもしれません。しかし、現実はそう甘くはありません。施主様のご要望・地形の事情などの「個性」要因がすべてで、サプライヤー側として「レイアウトを全部やりやすい長方形にしてくれ」とはさすがに要求するわけにはいきません。施主側の個性に合わせて、カストマイズ設計・製造するしかない、これが日本のコンテナハウス市場の特徴、また私たちのようなコンテナハウスの専門会社の存在価値と言えるでしょう。
2.コンテナハウス躯体組立――精度
上図にあるのは、大組立前の各部品で、上からそれぞれ、端部中部枠組立品(柱2本と上下短梁2梁で構成された枠体、外壁に当たるものは波鋼板を嵌め込む)、上梁と隣の枠部品、コンテナハウス基盤部品となります。
上図は大組立中の40フィートJIS鋼材建築用コンテナハウスです。大組立台の中に、既に組み立てられた 基盤部品2つが3つの枠部品(既に所要波鋼板壁や開口増強なども組立完了)に挟まれています。これから、上梁を装着していくところです。
各部品が図面通りに正確に組立らることは無論のことで、組立段階で最も真剣に対応しなければならないのは寸法精度のコントロールです。これを詳しく説明するとまた大量な内容になりますが、要するに、各材料の加工寸法、各溶接 部の縮み、波板溶接による全体の変形傾向の把握、溶接の順序など工夫して、各コンテナハウス主要寸法(長・幅・高・対角線など)を所定寸法±2.5㎜以内に収まることです。業界内の分かる人はわかりますが、これはそう簡単なことではありません。12192㎜全長に対し5mmの誤差範囲なので、「2400分の1の精度」に当たるからです。
3.コンテナハウス同士の仮組――また精度
個体のコンテナハウスが組立完了した後、建築全体の組立、いわゆるコンテナハウス同士の仮組が行われます。各コンテナハウスの柱脚下を同一レベルにして、日本建築現場でのレイアウトそのままにし、各部分の製造不具合の有無と製造正確度・全体寸法精度が逐一精密に確認される重要な一環です。コンテナ同士の連結(ボルト孔の同心など)屋根・壁の雨仕舞カバー部品の装着などもこの時に確認・検査します。一見したところ、割と簡単に見える作業ですが、10~20メートル、すなわち 10000~20000ミリ 規模の建築全体なのに、許容誤差はたったの5ミリ範囲です。これぐらいでなければ、基礎との大量のボルト孔やコンテナ同士の連結ボルト孔、雨仕舞カバーなど、何もかもすべてが狂ってしまい、何もかもすべてが台無しになってしまうリスクがあるからです。
建築用コンテナハウス、特に連棟する場合、同一コンテナハウスの内、一側面はコンテナ同士の境目で丸一面壁がなく、もう一側面は外壁に当たり、波鋼板が丸一面溶接するのは常事です。このような波板が不均衡となる場合、外壁のない側は波板溶接されないので、躯体の溶接熱による縮みがなく、これに対して、反対側の丸一面の波板溶接によって、躯体が溶接熱によって縮んでしまいます。こうなると、コンテナ完全溶接した後、肉眼では判断できないが、測量上では「く」文字のように全体が曲ってしまいます。この溶接変形は上記の精度制御に多大な支障を来すことは言うまでもなく、また一般物理原理である 熱膨張 に根付くので逆らえません。この溶接変形をどう対処(事前組立の寸法制御、施工手順、矯正作業など)するかは、設計者と工場技術者の底力が問われます。
今回も、またいつものように、工場の経験とノウハウ、また職人の技のお陰で、各コンテナハウス精度制御はばっちり、ボルト孔の合わせは上図の通りスムーズに検証できました。なぜコンテナハウス同士をボルトできちんと連結しないといけないかをもっと知りたい方はこちらへどうぞコンテナハウス建築におけるコンテナ間連結はなぜ重要?
仮組後、コンテナハウスの囲んだ中庭の様子は以下の写真の通りです。
仮組:外部様子
また、外壁の意匠ともなるマリンドア式外壁(マリンドア4面が計4面の内、1面だけ開閉できるようにし、他の3面は飾り用で開閉できないように溶接したので、「外壁」としての機能しかありません)は、より「コンテナ」である概念を強力にアピールしましたね。
唯一の20HQコンテナハウスは玄関・接客室で、入口玄関の庇も同じく、コンテナ風に作成してあります。
仮組:内部様子
続いて、内部様子です。内部には以下の数点の特徴があります:
1. 室内天井高さは合板を敷いて、天井下地を設置した後でも2.5mが確保でき、大面積の室内空間に天井が低いとの圧迫感を感じさせないようにしてあります。
2. 屋根には色々な方向向きに勾配を取ってありますが、室内天井の下地には勾配がなく、すっきりした水平になります。
3. 各コンテナハウスの天井が段差なく垂れ壁や垂れ梁などの障害物もなく同一平面で繋がって広がります。
上図中、根太がちょっと変わった部分はメンテナンス口部分です。この部分はトイレや流しなどの集中する水回り部分に当たります。
4.屋根細部――勾配と強度・剛性・シーラント無くもOK!
屋根ときたら、漏れるかどうかへのご心配は一番大きいと存じます。上の写真の通り、屋根には1/50勾配率があり、迅速な排水が確保できます。また、下の写真の通り、屋根の増強波筋方向と直交方向で母屋(屋根の支え部材)が400㎜ピッチで設置され、屋根鋼板を下でしっかりとサポートし、しかも溶接で一体化されています。こうやって、屋根上に数人が踏むくらいは言うまでもなく、1メートル以上の積雪でも何の問題もなく耐えられます。また、台風などのトタン屋根が吹き飛ばされる心配もなく、なんせ、この屋根の厚みときたら、トタン屋根の4倍(トタン屋根は通常0.4㎜厚)しかも母屋と溶接されているからです。こんな丈夫さを確保する理由として、洪水の時に大量の人が屋根上に登る時の荷重、豪雪の積雪荷重、台風の浮揚力などの非常事態を想定するほか、局部過大荷重による局部勾配喪失を防ぐためでもあります。局部でも凹みや撓みがあったら、そこで水が溜まり、長期的には屋根腐食ひいては水漏れへ進展する恐れがあるから、慎重に対応しなければいけないと考えております。
屋根鋼板の接続部は、勾配の上の一枚が下の一枚を被って、繋ぎ目を内外2回も完全溶接しています。こうやって繋ぎ目での水漏れは完全に不可能になりました。
また、コンテナ同士の屋根隙間には高精度のカバーが付けてあるだけではなく、カバー裏にも別の防水気密仕組み(機密で披露いたしかねます)が設けてあり、シーラントを使わなくても漏れない構造(もっとも、万が一のため、シーラントの使用を推奨しております)になっています。これだけに、Uni-Konがコンテナハウス同士の屋根連結接続部分の雨仕舞(この内容についてもっと知りたい方はリンクコンテナハウスの屋根連結と雨仕舞へどうぞ)を真剣に考え、工夫しているのです。
5.塗装工程
コンテナハウス躯体の素地処理(素地処理や塗装構成についてもっと知りたい方はリンクへどうぞコンテナハウスの塗装ペンキはどのように構成されていますか。)の後、いつも通りの出、外3遍内1遍塗装になります。今回の塗装色はちょっと微妙で、強い日差しの下、日暮れの時などではダークグレーに見える一方、曇天気や非直射日光の下ではミリタリーグリーンに見えます。
6.軽天下地・床開口
断熱用の吹付けウレタンを施工する前に、LGS軽天下地を施す必要があります。なぜなら、下地の間に吹き付けるからです。日本の石膏ボード幅に合わせて、455㎜ピッチにしています。壁下地の厚みは75㎜です。天井下地厚は50㎜です。
床合板には、前にも言及した水回りメンテナンス口蓋が設置してあります。また、中柱のアンカーボルト施工用の開口にも蓋が付いてあります。
7.ウレタン吹付断熱工程・建具装着
今回の工事は、屋根裏80㎜(日差しによる加熱を考慮してやはり最低でもこの程度が必要)、壁裏50㎜、床裏50㎜のウレタン吹付断熱が施されました。今回はべた基礎になるので、合板床下のウレタン吹付は露出のままです。布基礎、高架基礎など、床下が大気に暴露する場合は、基盤下鋼板防湿・防虫装甲( 基盤下鋼板防湿・防虫装甲 についてもっと知りたい方はリンクの施工事例4 簡易寄宿舎社員寮宿泊用コンテナハウス(検討と生産全過程・竣工写真)の基盤下部分のスペックをご参考ください)を推奨いたします。
8.全生産プロセスに伴う立会検査
Uni-Konは、 コンテナハウス が鋼材から製品までなる1ヵ月くらい渡る全工期内において、入荷材料検査、組立検査、仮組検査、塗装検査、軽天下地検査、断熱検査、建具検査、梱包前部品員数検査など、各肝心時点において入念に工場立会検査を行っております。これこそ、「不具合を未然に防ぎ、ミスを本工程内で早期発見し即時解決し、迷惑を日本現場にもっていかない」との弊社品質方針を徹底的に貫ける保証と根幹です。
9.梱包と出荷
終わりに
以上、 2022年九州宮崎県納入したJIS鋼材建築用コンテナハウスの工場内での生産過程をご紹介いたしました。また、本案件の設計過程・竣工写真を見たい方はこちらのリンク施工事例12の1 事務所・オフィスJIS鋼材建築用コンテナハウス(概要・設計篇・竣工写真)へどうぞ。お考え中のコンテナハウスポロジェクトにお役に立てる情報がありましたか?
では、また次回の内容まで、お楽しみください。