コンテナハウスの価格を安くするには?――その1

お問合せの中に、「20Ft或は40Ftコンテナハウスって一台いくらですか?」「窓・ドアの開口を1箇所開けるなら、いくらですか?」などのご質問はよくあります。設計や材料の使用量によります、「開口を開ける」のではなく、「開口の有る壁を作る」ので、開口でコストを計算しておりませんといつも同じ答えを繰り返してきました。なぜコンテナハウスの価格ははっきりと20Ft或は40Ft一台いくらのように伝えられないのか、なぜ「開口一箇所いくら」のように決められないのか、さらに、皆様のご注目の質問――コンテナハウスを安くするにはどうしたらよいか?本文から2回に分けて、これらの質問をとことん説明していきたいと思います。本文は第1回で、コンテナハウスの価格(コスト)構成と価格積算に深く関係するコンテナハウスの製作方式についてまず説明いたします。次回は、今回の内容を踏まえて、コンテナハウスの価格をどうすれば安く抑えられるかをご紹介いたします。

1.コンテナハウスの価格の構成

コンテナハウスの価格はほとんどの場合、以下のいくつかの部分に構成されます。

1) 材料費

JIS鋼材コンテナハウスのJIS鋼材(STKR材)
JIS鋼材コンテナハウスのJIS鋼材(STKR材)

まずは総コストの中に、大きいシェアを占めている材料費です。その名の通り、コンテナハウスを製造するのに必要となる原材料(一般的には鋼材、合板、部品など)の仕入れ費用です。これは当然ながら、所要材料の数量(重量)、原材料相場単価に関わると同時に、実はもう一つの重要要素として、材料の「有効利用率」にも深く影響されます。

2) 加工費

コンテナハウス加工中(柱部材)
コンテナハウス加工中(柱部材)

材料費に続いて総コストに大きな割合を占めているのは加工費です。これは材料をコンテナハウスに加工して変えるための主要工程(切断、溶接、組立など)を担う工場の固定費・人件費と利益に当たります。ご注意いただくのは、標準ISO貨物コンテナと違って、コンテナハウスはカストマイズ特注製造なので、各工程の人件費を細かく積算するのは不現実です。一般的に採用される積算方法は材料費と一定の比例係数を掛けて決めるのです。比例係数は製造難易度(生産効率)、加工図面の完備状況(生産効率)、注文の台数(工場の総利益)、客先の由来(中国国内か海外か、交渉・生産中の応対利便性)などの要素が総合的に加味して、工場側が決めます。

3) 特殊加工費

コンテナハウスのレーザー精密加工部品
コンテナハウスのレーザー精密加工部品

柱脚や柱頭、ガセットプレート、ダイヤフラムなどの高加工精度を要求する部品の精密加工や穴開けなどはレーザー加工先、CNC加工先に外注するのが一般的で、その分の特殊加工費用に当たります。

4) UT探傷試験費

コンテナハウスの超音波探傷試験(UT検査)
コンテナハウスの超音波探傷試験(UT検査)

客先の構造担当建築士の要求次第で、主要構造溶接部への超音波探傷検査(UT検査)が必要とされる場合に発生する費用です。要注意のは、検査に当たる第三機関の検査費用と別に、工場側も検査による生産停滞・手間取りなどで徴収する別途費用もあります。

5) 塗装費

コンテナハウスの使用環境(田舎・都市・工業・海洋大気など)はそれぞれなので、使用環境に適応する塗装工程(素地処理の程度、塗料の種類、塗膜厚、塗膜回数など)が個別指定できるので、この分の費用も単独で計算されます。無論、塗装面積、塗装工程関わる塗料費・人件費に左右されます。

6) 設計製図費

コンテナハウスの生産加工図面資料
コンテナハウスの生産加工図面資料

材料を製品にするには、労力だけではなく、加工を指導する加工図面も要ります。単純な形に見えるコンテナハウス躯体部分だけでも、20~30種類、百余りの部品で構成されます。これらの部品が各々正確に加工され、それぞれ正確にコンテナハウスを成すのに、相当の数の加工図面・生産資料が要ります。特に、連棟コンテナハウスなど、コンテナハウス一台ずつ形が違うと同時に、相互に正確に連結・交互する必要があるので、図面の量が何倍にもかさみます。これらの加工図面・生産資料の製作費用はコンテナハウスのパターン数(違う形の数)、外部付属部品の数量、設計の複雑度に関係します。特に、台数が少ない場合、パターン数が多い場合、連棟の場合、この分の費用の割合が高くなってきます。

7) 梱包費

コンテナハウスの付属部品同梱発送(梱包中)
コンテナハウスの付属部品同梱発送(梱包中)

名の通り、コンテナハウスが出来上がって、出荷時に必要となる梱包資材・梱包手数の費用です。コンテナハウスの梱包の種類、台数、建具の面積及び内部固定の付属部品の数量によります。

8) 利益

慈善事業ではないので、お客様のご要望通りにコンテナハウスのカストマイズ設計・製図・製造・検査管理・納入を組織する当社の利益はないと言ったら当然嘘になります。正直に申しますと、案件の規模、設計・製造の難易度、リスク(材料相場・為替・品質管理の面での)などを考慮して、上記総コストと一定の係数で積算させていただいております。

コンテナハウス製作方式について――よくある勘違い

中古海上貨物コンテナからの改造コンテナハウスへの馴染みが深いのか、経験上では、皆様がJIS鋼材コンテナハウスの製作方式に対する誤解が結構普遍的なようです。「コンテナハウスを作るのに、先にISO貨物コンテナを作り、出来上がってからドア・窓を開ければ、コンテナハウスになる」また、「JIS鋼材コンテナハウスとは、ISO貨物コンテナの原材料をJIS鋼材化にしたものに過ぎない」とのよくある勘違いです。

材料だけはJIS鋼材で、構造はISO貨物コンテナのまま
材料だけはJIS鋼材で、構造はISO貨物コンテナのまま

本サイトで何度も繰り返してますが、これは中古コンテナ改造ハウスのやり方としては正しいが、JIS鋼材コンテナハウスとしては、間違っています。
構造力学上では、ISO貨物コンテナから中途半端に改造したコンテナハウスは到底建築基準法の強度基準をクリアできません。建築用途として成立するJIS鋼材コンテナハウスはユニット工法で作った鉄骨建築物と同様、最初から「建築」として1から作らなければなりません。一見したところ、JIS鋼材コンテナハウスは貨物コンテナ改造ハウスにすごく似ていると思うかもしれませんが、実は、波板と外形寸法が同じである以外、ほぼ全部(特に鉄骨部分)違います。これについて、もっと深い知りたい方はこちらのリンクへどうぞ→JIS鋼材コンテナハウスって何?

工場内生産中のJIS鋼材コンテナハウス(開口周辺の補強材角パイプが見える)
工場内生産中のJIS鋼材コンテナハウス(開口周辺の補強材角パイプが見える)

本物のJIS鋼材コンテナハウスは1から作るので、「開口を1カ所いくら?」との質問が回答できます。既存の壁に開口を開けるのではなく、何もないところで開口の有る壁を作るので、開口のコストではなく、周りの壁のコストを計算するのです。具体的な作法として、「開口部分」を先に角パイプなどの補強材で囲んで組み立てて、そして周りの「壁になるべき部分」に波板を嵌め込んで溶接します。このような壁はいくらかは、当然開口の補強材と周りの壁材と塗装コストの合計によります。面白い結論に、開口の有る場合は絶対に開口のない場合よりコストが高いと限らないです。開口が大きい場合、節約できた壁材料と塗装コストが開口に使った補強材料よりも高く、結局コストダウンになります。同じ原理で、逆に開口が小さい場合、コストアップになります。(が、開口の建具費用を考えたら、やはり開口が小さい場合は安いです。)

7柱の40フィートHQ・JIS鋼材コンテナハウス
7柱の40フィートHQ・JIS鋼材コンテナハウス

「20Ft/40Ftコンテナハウスは1台いくらですか?」の質問も回答できます。単純に躯体部分だけを言うと、コンテナハウスのコストは鉄骨(骨)部分と壁部分(皮)に構成され、左右されます。壁部分は簡単で単純に壁面積を計算すれば大体わかります。例えば、連棟の場合、2台コンテナの隣接する部分には通常側面壁がなく、単棟コンテナハウスの4面全部外壁より安いです。鉄骨部分の計算はやや複雑で、通常は使用場所の災害条件、階数などで構造計算を経て鉄骨の断面性能(太さ)を決めます。簡単に言えば、鉄骨が太ければ太いほど、高くなります。また、コンテナ建築のレイアウトによっては、コンテナハウスの柱n本数でさえ、一定とならず、40HQの場合、通常の6本柱と違って、7本や8本、10本の場合もあります。当然、これらのコンテナの躯体の価格はそれぞれ大きく違ってきます。つまり、「標準ISO貨物コンテナ1台の価格はこれくらい」みたいな「たたき台」は存在しないわけで、すべては建築構造形式・強度要求と壁量次第です。

終わりに

以上をもって、コンテナハウスを安くするにはの第1部分として、先に理解していただく基本内容――コンテナハウスの価格(コスト)構成と価格積算に深く関係するコンテナハウスの製作方式をご紹介いたしました。次回は、コンテナハウスのコストを抑えるための方法をご紹介いたします。お楽しみください。

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