コンテナハウスの屋根って、どれくらいの積雪荷重が耐えられるの?

単体用コンテナハウスの屋根は、工場生産上の都合で殆どの場合ISO貨物コンテナの屋根をそのまま流用することになります。

そうです、そのデコボコしているコルゲート屋根です。見たことのない方は以下の写真をご参考ください。

コンテナやコンテナハウスの屋根上部コルゲート鉄板
コンテナやコンテナハウスの屋根上部コルゲート鉄板

このコルゲート鉄板屋根は通常の場合、1.8~2.0㎜の炭素鋼板(JIS鋼材コンテナハウスの場合SS400鋼板)を専用金型によってプレス成型して作られます。凸部による断面増強効果と平板を緩やかなアーチ形状を付与することによっての排水機能が本来の目的です。

さて、雪国で建てられる建築として、設計上の留意点と言えば、何と言っても積雪荷重への対応が挙げられます。一見してふわふわな雪が屋根に積もった結果、柱や梁、屋根にとってとんでもない大負担になりかねないからです。

日本の建築構造計算では、積雪荷重の基準として「1cmにつき20N/㎡以上」と建築基準法により決められています。これを20ftコンテナの屋根投影面積(≒14.8㎡)で計算すると、1cm厚さの積雪ごとに30キロ(宅配水3ガロン容量ボルト3本弱)の荷重をコンテナの上に載せることに相当します。「昨夜、30cmの降雪積雪があった」とすれば、今朝コンテナの上にすでに1トン弱(はい、軽自動車1台くらい)の荷重を乗せたことに相当します。なので、雪国の建築にとって、雪下しを疎かにされたら、とても冗談ではありません。

「雪下しを行う場合は多雪区域でも垂直積雪量を1mまで減じた値を採用してよい(但し表示義務規定有)」との構造計算規定もありますが、以上の計算によって、それは軽自動車3台余りの重量ですねよ!それを20Ftコンテナの上に載せることなんて、不思議でなりません。(というか、コンテナがかわいそう)

そもそも、コンテナハウスに良く採用されているあの1.8~2.0㎜薄っぺらの鉄板屋根が、別途支持なしで1mの積雪荷重が耐えられるのか?!好奇心旺盛な筆者は大型変位解析によく使われているノンリニア有限要素解析法(Non-linear Dynamics FEA)にて解析を行いました。

はい!解析結果は以下の通りです!応力の集中はやはり両端支持の箇所にあり、最大応力度=249.8MPaはSS400薄板の場合の降伏強度(235MPa)をちょっと上回っていましたが、最大応力は曲り角付近に極少数に点在していることと、角部の微小変形によって集中力の解消とプレス成型の冷間加工から得られた強化作用などの理由をもって、この箇所に生じる200~230MPaの応力度レベルをぎりぎり克服できると考えられます。

コンテナハウスの屋根1m積雪荷重に対して応力解析 Uni-Kon 
コンテナハウスの屋根1m積雪荷重に対して応力解析 Uni-Kon 
コンテナハウスの屋根1m積雪荷重に対して応力解析結果 Uni-Kon
コンテナハウスの屋根1m積雪荷重に対して応力解析結果 Uni-Kon

また、変形のほうも、9.83㎜の撓みとなったが、材料はほぼ降伏していないから、依然と弾性変形範囲にあり、雪下しをしたら、また元のアーチ形状に戻る見込みです。

コンテナハウスの屋根1m積雪荷重に対して応力解析撓み Uni-Kon
コンテナハウスの屋根1m積雪荷重に対して応力解析撓み Uni-Kon

難敵に対して、引けを取らなかったコンテナの屋根でした。いや、コンテナの屋根って、さすがに物流業界で何十年も使われてきた経験と知恵の結晶ですね。紙20枚ほど厚さの鋼板で、3トン余りの荷重を負担できるなんて、感動する気分さえも湧いてきます。

***人命に関わるので、ご注意を***

コンテナハウスを建てた方にとって心強い結果でしょう。が、くれぐれもご注意していただきたいのは、本解析の対象は屋根鉄板に限らているため、コンテナハウス構造体自身の強度安否を問わなかったところ(鉄骨が無限に頑丈である仮定)です。いくら屋根板自身が積雪を耐えられたとしても、建築の骨である梁、柱が折れたら元も子もないことになるでしょう。

特に、ラーメン構造建築用コンテナハウス(その定義はこちら→JIS鋼材コンテナハウスって何?)ではなく、波鋼板自身が強度を提供すしているISO海上コンテナの場合、強度提供者である波板がドア・窓開口に弱化されたり或は丸ごと一面撤去されたりして、多雪地域建築としては、屋根がどうなる?を心配する場合でなくなります。極端天候の場合、コンテナ構造自体が不成立となり、居住者・隣人・通行人の人命・財産を危険に曝してしまい、くれぐれもご注意ください。

また、JIS鋼材ラーメン構造コンテナハウスの中にも、一部不良業者によっては、柱と梁の接合部にラーメン構造の命である大切で不可欠なダイヤフラム(柱内増強板)を手抜きして設けない(見た目では判断しづらい)こともあり、「ラーメン構造だから大丈夫」と気楽で決めつけて考えるのも禁物です。詳細事情はこの辺:健全なコンテナハウスを作るにはまでご覧ください。

コンテナハウスの仕口部ダイヤ有無対比4
ラーメン構造建築用コンテナハウスによくある偽り、梁・柱接合部ダイヤ(内部横板)有無対比:左側は不良業者の手抜き接合部、右側は健全な接合部。(健全なコンテナハウスを作るにはより)

建築確認申請対応のコンテナハウスの構造も、業者や工法によって色々あるから、特定の構造と計算条件ごとに、一個一個解析を行う必要があるため、ここでは省略させていただきます。(Uni-Konなら自社コンテナハウスの全体構造解析を綿密に行っております。コンテナハウスをカスタマイズ設計したい方、ぜひ一度ご相談ください。)

なので、屋根は大丈夫だとしても、梁や柱は曲がってしまったら元も子もないので、建築用コンテナハウス構造体の構造計算と設計は疎かにしてはいけません。雪国の皆さんも、ISO海上コンテナのような標準型屋根は必ず雪下しを積極的にやりましょう!(この標準型屋根よりもっと頑丈なコンテナ屋根もあり、詳細はこちら、コンテナハウス屋根連結と雨仕舞までご覧ください。)

以上を持って、題の質問–コンテナハウスの屋根(精確に言えば:ISO海上コンテナ標準型屋根)って、どれくらいの積雪荷重が耐えられるの?の結果が出ました。答えは、約1mです!

コンテナハウスに関連する強度や構造計算の記事をもっと読みたい方はこちら:コンテナハウスの構造計算コラムにお越しください。

コンテナハウスの屋根は通常のISOコンテナ方式屋根(所謂、標準型屋根)だけではありません(このような屋根、コンテナを連結して使う時に問題になります。詳細はコンテナハウス屋根連結と雨仕舞まで)。コンテナハウス連結の都合で、排水を特定方向(コンテナの長辺、或は短辺)に誘導する勾配屋根方案もUni-Konがご提供いたしますので、是非ご参考になってください。詳しい内容(施工事例も含む)は、コンテナハウス屋根コラムまで。

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