施工事例13 屋上テラスデッキ付き店舗用コンテナハウス(竣工写真)
はじめに:ありがたい屋上テラスデッキ
土地が狭い設置場所にとって、コンテナハウスの屋上空間の活用はありがたいです。屋上テラスデッキ、手摺り、階段さえを付ければ、コンテナハウス建築面積と同等の屋上活動空間が得られます。
コンテナ飲食店は「屋上飲食空間」、コンテナ住宅は「屋上庭」、コンテナ民泊・ホテルは「屋上キャンプ場」をほぼ「ただ」!で入手し、魅力的ではありませんか。
実は、活用面積拡大の「+α」だけでなく、機能的な面にも十分価値があります。屋上テラスデッキを設ければ、天然的な遮光板になり、屋根への日光直射を遮る同時に、デッキ 下を風が潜って屋根を冷やす効果があり、光熱費の節約にも貢献できます。
こんな魅力的な屋上デッキ付きコンテナハウス、是非検討してみたいですね!今回は、ちょうどそのような屋上テラスデッキ付きコンテナハウス店舗の施工事例をご紹介いたします。
案件概況:
用途:飲食店・店舗・テイクアウト飲食店;
構成:20HQコンテナハウスx2台+屋上デッキ鉄骨+手摺り+階段+踊場;
納入先:神奈川県・関東地方
納入時期:2022年2月
レイアウト説明
コンテナ部分は結構簡単なレイアウトで、正面玄関で大きい開口一箇所だけ、出入り口と採光として機能し、テイクアウト店舗としてありふれる配置方式です。正面右側に階段を用意し、屋根上の屋上階段まで上がっていけます。そこで、購入したばかりのサンドイッチ・コーヒーセットを屋上パラソルの下で風景とともに満喫できます。
全体様子:パースvs実物
部分詳細説明
屋根構造
店舗の正面玄関はコンテナ側面(長手方向)にあるので、正面イメージの美観保ちと玄関上の滴りを防水するため、屋根排水が端面(短手方向)に導かれるべき、屋根は通常のコンテナ屋根と違って下図のような端部排水勾配屋根を採用しております。
コンテナ間の隙間部はご覧通り、屋根排水面より高いところに位置し、防水カバーで覆われており、最初からシーラント材の劣化による接続部隙間の雨漏れは防止できているわけです。
上図を見て、コンテナの上長梁の上に根太をそのまま置けば、デッキの下地材になりますが、実はそう簡単ではないです。
デッキ下地構造
デッキの「上」で見える「健康的」なイメージと違って、デッキの「下」は普段では見えない・ 陰気で腐食しやすい ・しかもメンテナンスしにくい「闇の世界」になります。こんなところは特に留意すべく、気付いた時にもう「手遅れ」のような事態を設計段階できちんと工夫し未然に防ぐことを心掛けます。
上図の通り、デッキの下地材はコンテナの長手梁に「直に置く」ではなく、溝形鋼でできている大引きを介して「架空」でコンテナと連結しています。二度手間に見えるかもしれませんが、その設計の裏に以下の理由と拘りがあります。
①デッキ下地材を架空にし、コンテナ長梁に直に置かないことによって、両者の接触部が水の溜まりやすい「毛細隙間」にならずに済むのです。
② また下地の「架空」によって広がったデッキ下空間が風通し状況が改善され、勾配屋根排水とともに乾燥しやすい腐食しにくい「デッキ下」環境を作っているのです。
③下地材を支持する大引き材(溝形鋼)も①と同じ理由でコンテナ上梁と3点連結支持の他、一切接触せず、通気乾燥ギャップ (画像では見えにくく) を用意してあります。
④下地根太材の断面は通常 「C」型 (Cチャンネルとも呼ぶ)ですが、突起した下リップが雨水を保持しやすいため、それを切った「ŋ」断面にして、常に乾燥しやすい形状にしたのです。
⑤安全のため、デッキ外周には強固な手摺りが必要なので、「二度手間」に見える溝形鋼はちょうど手摺りの「強固基礎」の役を担います。
手摺り構造
通常の手摺りを安くできる「コツ」:
手摺りの加工は、作りやすい、コストが安い観点から考えれば、以下の「コツ」があります。
①材料自身の剛性がよく、また溶接、切断もしやすいため、手摺りの柵や支柱などを中空断面の角パイプなどで製作すること。
②連結時のボルト穴合わせの精度要求が桁違いなので、手摺りの各段を相互に連結せず、独立して設置すること。
③設計手間が掛かるから、手摺りパターンをなるべく少なくし、全部同じパターンの手摺りを大量生産すること。
④柵は縦方向でしら 切断・溶接箇所が多く、手間が掛かるため、なるべく横方向にすること。
「コツ」を完全に背いた弊社の設計と理由
しかし、弊社の手摺りは、以下のように上記方針を完全に背いた設計になりました。その理由も同時に説明いたします。
①中空断面である角パイプをわざと使わず、平鋼を材料に
理由:中空断面の角パイプはパイプ内部への塗装やメンテはできず、十年程度経つと溶接不良箇所から侵入した湿気が内部結露して、内部から鋼材を腐食する傾向があります。しかも、表面で異常を発覚した場合は既に「内部が腐りきった」と同義するので、メンテする価値すらなくなり、手摺りを丸ごと交換するはめになります。充実断面である平鋼でしたら、そのような内部空洞がなく、外部塗装だけをちゃんと手入れなさっていれば、百年も使えます。
②精度要求が高くても、各段の手摺りを全部一体連結する
理由:角パイプと違って、平鋼は刀のように、縦方向が丈夫ですが、横方向は揺れ揺れするので、この横方向の揺れを抑制するのに、 各段の手摺りをボルトで連結し、一体化させる必要があります。 精度要求は高くなりますが、美観度アップ、角部分強化、一体化後の安全性さらなる向上、ギャップによる墜落・手挟み・衣装引掛り防止など、メリットが沢山あるので、 十分に元が取れます。
③手摺りの設計パターンが多く、複雑になりますが、仕方がない
理由:各段の手摺りを人力で運べるように70キロ程度(3m長さ程度)まで制限し分断してあります。分断位置により、手摺りの製作パターンが多く、確かに多少不便ですが、弊社の設計力と先進的なプレカット製作技術の下で別にそれほど苦労しません。そもそも、仕事とは、自分の都合より客先のご都合を優先すべきだと考えております。
④柵は安全性を重視し、縦柵に
理由:横柵は梯子のように簡単に登れるので、子供などに危険な目に会わせてしまう可能性があるため、「柵を縦にする」との条例は既に市役所などの指導書の中に記載してあります。片が手間省き、片が人命、とっちを選ぶかは、さほど悩む問題でもないと考えます。
安全性に対する真剣姿勢
手摺りは屋上デッキを利用する使用者の安全にとって命に係わるものなので、真剣姿勢で取り組みます。上図は最悪条件下の手摺りの根元付近解析結果です。換算の結果として、1mごとに4人の大人が全力で手摺りを外に押しても大丈夫です。
ボルト連結で、装着所要時間:2分/枚
手摺りは70キロ程度の重さで分割され、手摺り同士、また階段、屋上テラスデッキと全部高力ボルトで連結、溶接不要です。手摺り一枚(約3m)は2分程度で装着でき、現場工事にとって便利です。
上図は階段や手摺り、踊場、根太などの部材です。これらの部材は塗装乾燥後、下図のようにコンテナハウス内部に梱包固定し、出荷されます。
工場内で、各部品が仮組・確認・検査され、詳細な組立資料をコンテナと同時に納入したので、現場据付のほうも結構すんなりで、何と半日程度で終わったらしいです。
他の製作段階の写真
コンテナハウスはまず骨組だけが組み立てられます。建具開口周辺の補強材も組み立てられます。その後、「壁」になる部分に波板を嵌め込んで、溶接します。
お得意先の要求に沿って、主要構造溶接部に超音波探傷試験(UT検査)を入念に行います。コンテナ下部の検査箇所はコンテナごとを吊上げて検査します。上部箇所は梯子に登って、検査します。
正真正銘のJIS鋼材で、シールはちょっと溶接熱で焦げていますが、JISマークがちゃんと読めます。
UT検査合格後、 屋根板波板が嵌め込まれ、屋根板が載せられ、コンテナの様子がもう大分見えてきます。仮組連結段階に入り、階段の踊り場を先にコンテナと連結していきます。
弊社が工場現場に配布した組立図面です。一見シンプルに見えるコンテナですが、結構図面の量があります。
チェッカープレートの階段踏み面です。階段幅800㎜、相対する2人でもどうにかすれ違えます。
根太上面は外周の大引きより25mm程度低く設定してあり、アウトドアデッキを装着後、デッキの上面と大引きが綺麗に揃えるので、別の装飾カバーは要りません。一本目の根太に角パイプが直交方向で溶接されていますが、端面にある手摺りの剛性が足りず( 応力解析で分かった )、補強用のものです。
地面から上を見た屋上デッキ手摺りです。塗装がなくても、ばっちりです~😁
塗装は通常外側3遍(下・中・上)ですが、お得意先は運送途中の擦り傷はシビアなので(実はほぼ傷つきません)、上塗りは自分でやることになり、白の中塗りまでです。冒頭の写真で分かる通り、現場では黒の上塗りが施されました。
母屋は400ピッチで設置され、屋根板を強固に支えています。「デッキを載せて、その荷重が耐えられるの?梁の真ん中にもう一本柱が要るのでは?」と聞くお客様がいらっしゃいますが、ご覧の通り、そんなものは全然要りません!構造解析でも実際に屋上に上がってみても分かる通り、ラーメン構造のJIS鋼材コンテナハウスはとにかく、めちゃくちゃ頑丈です。(計算上、この屋上に80人上がっていっても、コンテナ躯体もデッキ鉄骨もぶれもしません。)
終わりに
以上、屋上テラスデッキ付きコンテナハウスの施工事例をご紹介してまいりました。屋上テラスデッキとコンテナハウスと、実用的に言っても、意匠的に言っても、数の少ない天然的に相性のとても高いオプションパーツで、とても推薦いたします。が、検討段階で、以下の数点をくれぐれもご注意いただきたい:
①コンテナ躯体構造は屋上デッキと利用者の重量が耐えられるか?
②屋上テラスデッキ構造はコンテナ屋根の防錆やメンテに悪影響をもたらすか?
③屋上デッキ周辺の手摺りは安全性・耐久性は保証できるか?
まだよくわからない方、屋上デッキを設置するかどうかを悩んでいる方、これらの問題を全部入念に解決できたUni-Konにぜひ一度ご相談ください!悔いのないコンテナハウスを、真剣に検討して建てていきましょう!