施工事例16の2 多雪地域寄宿舎・ホテル用コンテナハウス(工場生産風景)

今回ご紹介する案件はまたとなる作業員寄宿舎・ホテルで、東北地方・秋田県の海辺にある風力発電工事現場の作業員用のものになります。20HCコンテナハウス21台で、20室の客室と1棟の管理員室の構成になります。内容が多いので、2つの記事に分けて、ご紹介いたします。前の設計・竣工部分の内容をお読みになりたい方はこちら、施工事例16の1 多雪地域寄宿舎・ホテル用コンテナハウス(落札への設計、竣工写真)までご覧ください。本記事は中国大連にあるコンテナハウス生産工場内での生産風景を写真付きでご説明いたします。

典型的なコンテナハウス生産過程

1.材料仕入れ

まずは、当然、JIS鋼材コンテナハウスなので、JIS鋼材の入荷になります。いずれも、鋼材メーカーからのJISマークがちゃんと付属・標記してあります。

JIS鋼材コンテナハウス所用材料:JIS鋼材
JIS鋼材コンテナハウス所用材料:JIS鋼材

2.部品加工

続いて、材料入荷に伴い、部材の準備も同時に展開してきます。弊社コンテナハウスの生産は、プレカット方式(もっと知りたい方は、こちらコンテナハウスの先進生産方式――プレカット(pre-cut)方式までご覧ください。)を採用しており、作りながら、測量しながら、様子見ながら部材を徐々に合わせて作るのではなく、生産効率と材料利用率、加工精度の向上を図るため、一遍に準備段階で、材料を全部切断・カット・曲げ・溶接加工を加え、後の組立段階では積み木のように、部品番号に沿って、部品を取って組み立てるだけです。無論、これを実現するには、高精度・高詳細度の設計・製図技術が必要で、これも弊社の強みの一つです。下図のように、生産の初期段階では、作業員たちはコンテナの柱、梁、根太、マリンドア、母屋、屋根板などの部品を夢中に加工し、ずらりと積み上げていくだけます。

JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:部品加工
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:部品加工
部品精度コントロール

コンテナ全体は部品の一つ一つで構成されているので、その品質と精度も部品の品質・精度の密接にかかわります。特に、プレカット技術を採用したら、部品一つの誤差で、ほかの部品の装着にも影響してくるので、部品ごとに、1㎜以内の誤差許容範囲となっています。下図の柱部品は溶接完了したところ、理論値2896㎜高に対して、実物は2895㎜強で出来上がっています。(この一本の柱には、複数枚の内ダイヤフラム・柱頭・柱脚部品の溶接があるので、部品いずれの溶接も0.5~1.5㎜程度の全長縮みをもたらすので、この出来上がり精度は、非常に経験に依頼し、容易にできるものではないです。)

JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:部品精度・溶接縮み量制御
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:部品精度・溶接縮み量制御

3.枠体組立

部品準備完了後、組立工程に入ります。組立工程も前後枠体(40フィートの場合は、中部枠体も)組立、大組立、全溶接に3部分に分けられます。まず、行うのは、前後枠体の組立です。当然、コンテナ一つ一つが違う(厳密言えば、4種類、8タイプの端部枠体があります)ので、図面と照らし合わせながら、入念に組み立てていきます。ちょうど、この機会を利用して、庇の装着具合も確認できています。

JIS鋼材コンテナハウスと簡易庇・ターンバックル勾配調整機能付き
JIS鋼材コンテナハウスの端部枠組立と簡易庇・ターンバックル勾配調整試し

4.大組立

20Ftの場合、両端部枠ができた時点で、大組立段階に入ります。端部枠体が大組立専用の組立大型治具内に吊られ、上下長梁と合体させます。言うのは簡単ですが、この間、全体の長さは無論なこと、上下対角線・垂直度などいろいろな綿密な測量を経て、各部品が治具内で精密に設置・固定されます。そして、主要構造部が定位されてから、二次部材(根太・母屋・屋根部品・壁波鋼板)まども次々と定位・仮溶接(例外として、後で別部品で遮断されるので、主要構造部の本溶接はこの段階で始まります)されます。コンテナハウスがほかの鉄骨造建物との一番の違いは完全溶接体であることと言えます。一般鉄骨造の場合、柱部品・梁部品は同じく工場内で生産されるものの、その組立は現場での建て方時になります。現場のアンカーボルト状況に合わせて、梁のボルト連結部位の遊び量を利用して、基礎・加工の誤差を吸収できます。それに対して、コンテナハウスは各柱や梁も含まて、完全溶接体なので、出来上がったら、もう柱間寸法が完全に決まってあり、現場での融通が一切効かないです。なので、工場内での精度コントロール、いわゆる下図にある場面が、まさに正念場です。

JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:組立2
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:大組立
開口についてよくある誤解

大組立が完了したところ、最終コンテナの様子がもう見えてきます。ここに、よく誤解されるのは、コンテナの波鋼板外壁にある建具開口です。「各開口は後でグラインダーでカットしてできたのものか?」「開口せず、後で自分で開けてもよいか?」とよく聞かれます。上図や下図を見てわかる通り、波鋼板にある開口は波板に開けたのではなく、「開口」が先にあって(先に補強枠材で囲まれる)、後でその周辺に波板を嵌め込んだだけです。(確かに、場合によっては(上下梁を連通する補強材のない場合)後で波板に開けることもあり、溶接変形が激しく、壁が波打つや角部の溶接不良が生じやすいなどのデメリットがあり、稀です。)

JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:組立
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:大組立完了

5.本溶接

大組立が完了した時、各部品が既にお互いに仮溶接され、一体となって、ほとんど変形しません。それで、大組立用大型治具から吊り出され、4柱脚がフラット一面になるようにした溶接専用水平台面に載せ、各仮溶接で臨時定位した隙間を本溶接します。この段階を経て、気密・水密の完全溶接体の鋼鉄ボックス躯体が出来上がります。そして、塗装段階に入る前に、弊社が現場に立ち入り、中間検査としての躯体の各肝心寸法の測量検査を行います。下図は、コンテナ躯体の各生産段階をよく見せた写真で、それぞれ部品状態・端部枠状態・大組立後の本溶接状態・躯体完成検査待ち状態になります。

JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:組立3
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:部品状態・端部枠状態・大組立後の溶接状態・躯体完成検査待ち状態

6.躯体塗装工程

塗装工程は以前にもたくさんご紹介したので、詳細はそちらにご参考ください。コンテナハウスの塗装ペンキはどのように構成されていますか。ここで、簡略にご説明いたします。コンテナハウスの塗装は一般的には、外部は除錆素地処理の上、下(防錆)・中・上塗りの3遍塗装、内部は除錆処理+防錆下塗りだけとなります。(内部は通常、内装やウレタン吹付も行うので、複数の塗装が要らず、基本下塗りだけというわけです。)除錆と素地処理は、尖る鉄砂を高圧空気で噴射し、浮き錆や油分、埃などを除去する同時に、塗装面をギザギザ粗目にし、ペンキの付着力を向上させるためのものです。下図は、外部の除錆素地処理、下(防錆)・中・上塗りの3遍塗装の写真です。

JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:塗装工程・多層塗装1
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:除錆素地処理、下(防錆)・中・上塗りの3遍塗装

下図は塗装室で塗装を受けている最中のコンテナです。各塗装がまだ未乾燥状態です。

JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:塗装工程・多層塗装
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:塗装工程・多層塗装

7.合板床敷き

塗装が乾燥後、すぐに内装段階に入ります。まずは、床合板を敷いていきます。根太は床合板幅に合わせて設計されているので、この部分の板加工作業は楽です。下図にある床開口はユニットバス装着するための開口です。根太も当然、それに合わせて、設計しなおしてあります。定位した後、床は太目のコンテナ床ネジで鋼製根太に強力に固定されます。

JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:床敷き・ユニットバス装着部貫通口
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:床敷き・ユニットバス装着部貫通口

8.断熱工程

床敷きの後、通常はLGS軽天下地の作業になりますが、今回の案件は日本海際の東北部、寒冷地方なので、室内空間よりも断熱効果を最優先すべく、LGS軽天下地より先に断熱工程(発泡ウレタン吹付断熱)を行います。メリットとしては、LGS軽天下地自身による熱橋効果が抑えられます。が、当然ながら、断熱層と軽天下地と分離した分、室内空間も断熱層厚み分狭くなります。ちなみに、今回の断熱厚みは、屋根裏・外壁裏・床裏ともに50㎜となります。

JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:ウレタン吹付断熱工事1
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:ウレタン吹付断熱工事1

断熱工事は、発泡ウレタンを吹き付けながら、厚みを測り、均一な断熱厚さを確保しているのです。下図中、竿をコンテナ床下断熱層に刺してるのは厚み検査員です。竿の先端に50㎜長の釘があり、それを全部断熱層に刺し込めたら、50㎜達成とのことです。

JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:ウレタン吹付断熱工事、吹付厚み検査
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:ウレタン吹付断熱工事、吹付厚み検査

9.LGS軽天下地工事

断熱工事に続いて、LGS軽天下地工事になります。一般の住宅工事ともさほど差異はありませんが、今回特別なのは、ユニットバスの天井裏排気パイプのくぐれる空間を用意するために、敢えて天井高さを200㎜程度下にぶら下げているところです。

JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:LGS断熱内部完成・ユニットバス装着部貫通口
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:LGS断熱内部完成・ユニットバス装着部貫通口

10.床下防腐塗装

床下断熱施工後、抜けられないのは床下防腐塗装です。下図は、コンテナ底部の防腐塗装の写真です。防腐塗料は海上コンテナにも使われているアスファルト系塗料で、下部に露出した合板床(下部ウレタン塗装がある場合は、ウレタン断熱層も一緒に)と根太を丸一面塗りつぶし、地面湿気・シロアリなどの害虫を(ウレタン断熱層がある場合は断熱材に有害となる地面反射した紫外線も)遮断し、コンテナハウスの基盤を保護します。

JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:底防腐塗装
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:底防腐塗装(発泡ウレタン断熱材も一緒に保護する)

11.生産完了・梱包

諸工事が完了し、付属部品(今回は取り外し式マリンドア・庇部品など)を床に固定し、ビニール膜でコンテナ全体を巻き包み、出荷待ちとなります。

JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:工場生産完成
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:工場生産完成
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:梱包
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:梱包

実物とパース画像対比

また、いつもの通りのパース画像対実物です。弊社従来の方針は「パースで見えたものは実物になる」ということです。

JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル実物とパース対比1
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル実物とパース対比1
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル実物とパース対比2
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル実物とパース対比2
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル実物とパース対比3
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル実物とパース対比3
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル実物とパース対比4
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル実物とパース対比4
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル実物とパース対比6
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル実物とパース対比6

後書き

21台61日間納入、最短2日/台も可能

今回の案件は、台数もそれなりにあり、納期もちょっと急ぎ目の方でした。予想納期70日間だったのですが、プレカット技術の応用と作業員のプロならではの素早い仕事ペースで、見事に61日間で完成しました。21台の数量で、内装も含めて、全体平均して3日間/台の生産ペースでした。工場長の言うには、注文台数がさらに多い場合、効率がさらにアップすることも可能で、最善2日/台のペースも可能だそうです。(勘違いしないでほしいのは、1台注文なら2~3日間でできあがるわけではありません。材料仕入れや加工準備などもあり、1台でも35日間~の納期になります。)生産後期、徐々に下図のように工場内が満杯状態ほどの盛況になってきました。(工場敷地内に露天コンテナヤードもありますが、21台はギリギリ入るのと、やはり露天は屋根下よりいやなので、敢えて完成品を外に出さないでもらったのです。)

JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:21台生産中工場内風景
JIS鋼材コンテナハウス寄宿舎ホテル加工生産:21台生産中工場内風景

以上で、多雪地域寄宿舎・ホテル用コンテナハウス21台の工場生産部分をご紹介いたしました。では、また、次回までお楽しみください!本案件の設計と竣工写真部分を読みたい方は施工事例16の1 多雪地域寄宿舎・ホテル用コンテナハウス(落札への設計、竣工写真)までご覧ください。

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