あなたのコンテナハウスは、ラーメン構造?それとも「拉麺」構造?

ラーメン構造JIS鋼材コンテナハウス輸送時フレーム保持用斜材
JIS鋼材ラーメン構造コンテナハウス:輸送時のフレーム保持用斜材がちょっと怪しい

ちょっと、怪しい斜材…

上図は最近たまたま見かけた他社のコンテナハウスの出荷前仮組時の写真です。一般のISOコンテナと違い、太い柱、太い梁、これは間違いなくラーメン構造(壁なく、柱・梁材だけでも成立する構造、ラーメン:ドイツ語Rahmen、「フレーム、枠」との意味)のコンテナハウスですね。この写真で、「えっ、ちょっと待って…怪しいなあ…」と思ったのは、上下梁の間に沢山構えてある斜材です。

なぜ怪しいかというと、斜材がこんなに構えると、室内空間がむやみに遮断されて分裂し、一つの部屋として使えなくなるので、理屈上唯一の可能性として、これらの斜材は輸送時だけに使うコンテナ躯体フレームを歪まないようにする補強材だろうと判断せざるを得ません。所謂、現地に着いて、据付後に撤去する部材です!

一見で、何の問題もないように見えますが、むしろ、この業者が親切・丁寧ではないかと思うところに、実は大問題が潜んでいる、それは――

「輸送時にも必要な斜材は実際使用時に本当にまた撤去できるのか?」

の問題です。

構造計算上では、災害の多い日本で使える建築用コンテナハウス躯体は、満載状態(数トン荷重)の上にさらに、最小自重0.3倍の水平地震力、よくある自重数倍の台風力、積雪荷重を耐えられなければなりません。これらの荷重はいずれも輸送時の振動や吊り上げによる負荷より遥かに超えています。簡単に言うと、もし本当にコンテナ躯体がこれら使用時に向かわなければならない厳しい使用条件に耐えられるなら、輸送時の負荷は斜材なんか要らず、楽勝で耐えられます。もし輸送時の小負荷でも斜材で補強しなければならない「やわ」なものなら、斜材を撤去して使う時どうなるのか。。。写真中では、天井が吹き抜けとなっているので、恐らく竣工後2階建てコンテナ建築になるだろう。。。一階部分の負担はさらに大きくなるだろう。。。考えれば考えるほど息を呑むことにします。

そもそも、梁・柱が既にこんなに太いのに、その業者は何を心配しているのか?単純に心配性なのか?(ならいいけど)本文は、ラーメン構造のJIS鋼材コンテナハウスでよく素人に見過ごされてしまう罠を解説いたします。そして、あなたのコンテナハウスは本物のラーメン構造なのか、それともただのやわな「拉麺」構造なのか、判断方法も教えます。

ちなみに、弊社設計・製造監督したコンテナハウスは下図のように、重荷を積んでも、1点ワイヤ吊でも、自信をもって(当然計算を経てね)輸送補強斜材なんかは要らないです。使用時の状態のままで輸送できます。

JIS鋼材ラーメン構造コンテナハウスの構造が健全なら輸送用斜材補強は要らん:重荷を積む時
構造が健全なら輸送用斜材の補強なんかは要らん:重荷を積む時
JIS鋼材ラーメン構造コンテナハウスの構造が健全なら輸送用斜材補強は要らん:設置現場到着時
構造が健全なら輸送用斜材の補強なんかは要らん:設置現場到着時
JIS鋼材ラーメン構造コンテナハウスの構造が健全なら輸送用斜材補強は要らん:コンテナ据付吊り上げ時
構造が健全なら輸送用斜材の補強なんかは要らん:現地吊り上げ時

ラーメン構造は柱・梁が太くなるだけでは強くならない

JIS鋼材コンテナハウスは基本的にラーメン(骨組枠体)構造です。柱(縦主材)と梁(横主材)部材で構成された枠体(骨組み)の頑丈さはコンテナハウスの強度を決めます。当然の思考流れとして、「じゃ、柱と梁を強くすればいいのか?」と思われるかもしれません。しかし、そうと限らないです。いくら丈夫な骨組み材(梁・柱)を使っても、繋がる部分(仕口部)が不健全である以上、骨組み材が折れる前に仕口部が先に壊れてしまい、結局何の意味もないからです。

健全な仕口部を作るには、骨組材の性能を完全に発揮させられる完全溶け込み溶接の採用と健全な仕口部構造の確保、この2点が要求されます。鉄骨構造である以上、溶接の重要性は言うまでもありません。しかし、逆によく見過ごされてしまうのは仕口部の構造健全性です。特に、仕口部の内部にある、外部から見えないダイヤフラムがラーメン構造の罠になります。

テコの強さと柱の弱み

このダイヤ(ダイヤフラムの略称、宝石ではありません)は柱(縦材)の内部にあり、梁(横材)断面の上下縁(フランジという)の当たるところの裏側に設置し、柱断面形状を保持するための補強用板材です。

なぜ柱断面を保持・補強しなければいけないというと、それは柱(縦材)は通常角鋼管のような中空断面材料なので、全体として強くても、梁と接続する局部はあくまでも「紙一重」のような薄肉鋼板しかありません。横材である梁材は床や屋根などから上下方向の荷重を受ける時、梁端部の柱と接続する部位、特に上下縁(フランジ)のところでテコのようなバカでっかい押す力と引く力が加えられます。この強力な力は通常では鋼板で巻いた「紙筒」のような柱の「紙一重」薄い管壁鋼板だけでは耐えられなく、補強無しでは本当に指で紙筒の側面を押すように潰されてします。

柱(縦材)がこんな無様にならないために、梁の上下縁(フランジ)と接続する部分の裏側に、ダイヤフラムという補強用鋼板を溶接するのです。溶接後、梁の上下縁(フランジ)の当たる部分はもう空洞ではなく、補強板の鋼材で充満されているので、丈夫で潰されずに済むのです。

コンテナハウス大対決:拉麺構造vsラーメン構造

百聞は一見に如かず、ダイヤ有無対比の形で、コンテナハウスの仕口部をFEM解析して、大対決しよう!

条件説明:

1.下図のいずれも左右サンプル同じ材料と同じ条件で、唯一の違いはダイヤの有無で、左:手抜きダイヤ無し(拉麺選手)、右:真面目ダイヤあり(ラーメン選手)です;

2.梁に掛ける荷重は当該梁材が理論的に耐えられるべき全力の2/3程度(STKR400材で156Mpa/235Mpa)です;

3.変形結果を顕著化するため、どれも20倍変形で誇張してお見せしています;

4.図中の色の見方は、青に近ければ近いほどその辺の材料は「平気~」と言っている、赤に近ければ近いほどその材料は「きつい!」と喘いでいる、灰色になったらその材料は「もう死んだ」との意味です。

それでは、始めよう!

コンテナハウスの仕口部ダイヤ有無対比2
コンテナハウスの仕口部ダイヤ有無対比1

1)右上視角 左:梁強度2/3だけに当たる負荷にも関わらず、拉麺選手は理論力学の期待を外れ、柱(縦材)材である角パイプ管壁がテコの力に負け、紙筒のように沈没変形してしまい、そのせいで梁(横材)材端部もバランスが崩れて激しく歪み変形しました。右:逆にラーメン選手は、理論推定の通りで、ダイヤのある仕口部は健全で見事にの引く・押す力を制し、見事にモーメント(回転力)を柱に伝えた。(梁端部角付近の灰色はFEMの数学モデルによる応力特異点現象で、別に「死んだ」わけでありません)

コンテナハウスの仕口部ダイヤ有無対比1
コンテナハウスの仕口部ダイヤ有無対比2

2)右上視角 左:拉麺選手の不健全でぐにゃ変形している仕口部、梁断面の変形(矩形でなくなるほど)も激しい。156Mpa程度の力を掛けるいるのに、灰色になった部分は明らかに使用鋼材の降伏力(235Mpa)を超えていることを表明しています。当該灰色部位は破損部位に当たります。右:ラーメン選手は健全な仕口部では梁断面は元のままで、健在です。(接触部分に灰色も点在するが、FEM解析モデルの数学上の特異点として無視できる)

コンテナハウスの仕口部ダイヤ有無対比3
コンテナハウスの仕口部ダイヤ有無対比3

3)下視角‐左 下から柱の内部を覗くと、左側の拉麺選手は明らかに手抜きしてダイヤがないことがわかります。そして、前述説明の通り、ダイヤのない柱管壁がテコ力で紙筒のように押しつぶされています。図中の柱材は4.5㎜肉厚のSTKR400材(JIS鋼材)である。右:ラーメン選手はダイヤの補強によって、理論計算の通りで問題なし。(が、上下縁深刻なオレンジ・赤色になるのは、押す力と引く力の強力さを見せている)

コンテナハウスの仕口部ダイヤ有無対比4
コンテナハウスの仕口部ダイヤ有無対比4

4)断面視角‐左 真ん中から切り裂けた仕口部の断面視角、変形の具合は一目瞭然。左:拉麵選手の上部はトッププレートのお陰でOKだが、下部の柱筒壁は押す力に負けて、大きく中へ沈んでいます。(こりゃもう「拉麺構造」としか言えなくなります。)右:ダイヤとトッププレートの補強により、柱のフランジ接続部は鋼材で充満されています。梁フランジ(上下縁)から来る強力をすんなりと受け、柱材全体に伝わり続くことができています。(これこそ、ラーメン構造の真義。

勝負判明:ラーメン構造の勝ち!!

仕口が潰れたら、どうなるの?

左側の拉麵構造の仕口は、あれほど変形して、実質上何を意味しているかというと、例えば豪雪時のことを考えてみましょう。

仮に、使用する柱・梁材の断面寸法で計算して、理論上あるコンテナハウスの屋根は90cmの積雪重量が耐えられるはずと算定・設計・製作されます。材料はばっちりのJIS鋼材で、溶接も問題なし。しかし、メーカーの手抜き小細工でこのダイヤ補強をしないまま出荷しました。もし梁は波板壁材或は斜材による補強がない場合、仕口部が不健全であるため、実際使用中では積雪が60cm(2/3)も超えない内に既に仕口部(柱上部)が設計を背けて激しく変形破損し始まります。

運がよかったら、柱上部が折れて、大梁が撓んで塑性的に永久変形が残るぐらいで済みますが、最悪の場合、骨組み材の断面形状が崩れて強度が急激に失い、更なる変形、ひいては倒壊することもありうるのです。

「コンテナは波鋼板で増強されているから大丈夫」とよく聞く口実だが、現実はそう甘くありません。特に連棟使用時、部屋の中に当たる部分の大梁の下には波鋼板壁も斜材もない場合がほとんどで、まさに梁・柱の接合部の正念場になります。

こんなところで、輸送時斜材補強がなければ運べないコンテナハウスよ、あんた、試練に耐えられるのか?!

健全なコンテナハウス仕口部と有無の判断区別

解析図に続けて、実物も見てましょう。下図はUni-Konの提携製作工場で作られているコンテナハウスの柱部品と完成品です。柱の中に見える板は内ダイヤです。外から見ると、完全に溶け込み溶接された溶接跡が縞模様のように見えます。高熱を受けた後の微小変形も残るので、塗装後も溶接位置を判別できます。ダイヤの数は1枚と限らないです。仕口で交叉する梁の高さが違う場合、梁フランジ(上下縁)に合わせて、複数のダイヤを設ける場合もあります。

内ダイヤのあるコンテナハウスの仕口部
内ダイヤのあるコンテナハウスの仕口部

Uni-Konのコンテナハウスにはダイヤは全数完全溶け込み溶接で装着しております。

Uni-Konと工場とのやり取りは、全体イメージを掴む外観意匠図・立面図・レイアウト図程度ではありません。細かい部品加工図面、詳細組立図面までも生産現場に直接配布します。これによって、得られるメリットの一つとして、ダイヤの数量、大きさまでもが完全指定・管理できるので、工場側の生産上の都合で、見えないダイヤを手抜いたり、溶接を安易な隅肉溶接でごまかしたりすることは最初から防いでます。

作業員が外注先から取り寄せた加工部品を部品図面(弊社直配布、弊社中文名:「大連優納科国際貿易」)と照合しているところです
作業員が外注先から取り寄せた加工部品(右上の角の取られた正方形部品はダイヤです)を部品図面(弊社直配布、弊社中文名:「大連優納科国際貿易」)と照合しているところです

Uni-Konから直配布した加工図面と照合している部品。右上の正方形部品はダイヤフラムです。

残念ながら、お客様自身がそこまで理解していないのか、それとも工場側に何らかの事情があるのか、ラーメン構造であるJIS鋼材コンテナハウスであるにもかかわらず、下図のように、ダイヤフラムのないコンテナハウス(拉麺構造コンテナハウス)もよく見かけます(しかも確認申請も取れていると思われます)。常時ならともかく、非常事態の時、このような構造がどうなるのか、考えると背中が冷えます。もう一つ残念なお知らせですが、ダイヤは当初製造時しか装着できず、後から入れなおすことはほぼ不可能です。

ダイヤのないコンテナハウスの仕口部事例
梁位置の原因で、すぐにダイヤがないことと判明できる他社のコンテナハウスの仕口部事例

普段ダイヤはあるかどうかははっきりと判断しにくいですが、上図のように、ダイヤのあるべきところに孔が開けられないので、すぐに「ない」ことと判明できます。少なくとも梁フランジ(梁の上下縁)の延長線(図中青点線)と衝突する孔の裏には存在すべきダイヤはなく、健全な仕口とは言えないでしょう。こんな仕口なら、増強波板がないところで補強用斜材を入れたいとのメーカーの気持ちはわかりますよね。。。

終わりに

以上、JIS鋼材建築用コンテナハウスのラーメン構造(拉麺構造も)についてご説明いたしました。材料がどうであれ、溶接がどうであれという前に、ダイヤの有無だけでラーメン構造と拉麺構造ほどの違いが出るから、コンテナハウスを購入しようとされる方にとって、しっかりと見極めるべきところでしょう。そして、コンテナハウスの構造は、人命に関わる大事なところなので、しかもコンテナハウス一軒一軒それぞれ違う環境、用途に応用されるので、丁寧な構造検討が必要でしょう。コンテナハウスの構造に詳しいUni-Kon(Uni-Konを選ぶ理由)にぜひ一度、お問い合わせください。

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