うちのコンテナハウスなぜ山形鋼(アングル)柱を使わないのか?(その2――コスパ篇)

山形鋼(アングル)柱のJIS鋼材建築用コンテナハウス、流行ってきた年月が既に長いです。開放的な材料断面のおかげで、外側からコンテナ間の上下・左右連結もやりやすい、装飾カバーも付けやすい、基礎アンカーボルトとの締結もやりやすい、おまけに審査機関にうまく口説けば建築基準法の「仕様規定」に帰属させ、構造計算も免れます。一見したところ、メリットばかりで、コンテナハウスの柱としてほぼこのアングル柱以外はもうありえません。そして、一時期、コンテナハウスの四隅にアングル(山形鋼)柱の応用にめぐって、各社が特許出願の争いが狂熱になったことさえもありました。(が、創造性が欠いている故特許庁にほぼ全部拒絶されたらしいです。)

Uni-Konの山形鋼(アングル)柱コンテナハウス事例
Uni-Konの山形鋼(アングル)柱コンテナハウス事例

弊社は、客先の特別要求がなければ、アングル柱を採用しないです。(一般的には角パイプの柱を採用しております。)要求されても、使用しないように忠告します。(「どうしてもほしい」という施主様には、施主様のご意志を尊重し、構造検証合格した前提で、ご提供はできます。上図と下図は弊社のアングル柱の納入例一部です。)特許のしがらみがあるわけでもないのに、メリットばかりを持っているアングル柱を、なぜ使わないのか?と疑問を感じていらっしゃるかもしれません。実は、アングル柱コンテナハウスには、ちょっとしたデメリットが数点あります。本文は、そのデメリット、つまり弊社のコンテナハウスがなるべくアングル柱を避けている理由をご紹介いたします。内容が多いため、3回に分けてご紹介いたします。今回はその2回目――コスパ(コストパフォーマンス性)についてです。(最初からお読みになりたい方は、1回目――強度篇までお越しください)

Uni-Konの山形鋼(アングル)柱コンテナハウス事例2
Uni-Konの山形鋼(アングル)柱コンテナハウス事例2

アングル柱のデメリット(二):コスパが非常に悪いから

第一篇(強度篇)の内容でもわかるように、アングル材は弱軸まわりの曲げ抵抗性能が非常に貧弱であることはご理解はできたと存じます。そのくせに、余計にコストが高いです。

鋼材の材料コストは野菜や果物と同じ、重量と比例するのは常識でもわかります。実は、コンテナハウスを買おうとするあなたは支払わなければならないもう一つの大コストもこの重量と比例するのです。それは、鋼材加工費です。

鉄骨業界での「暗黙の了解」のようなものとして、目に見えない、計り知れない(にくい)加工費は鋼材材料コストと一定比例係数で計算すれば、経験上も大差なく実務上も便利で、非常に助かります。材料コストが高ければ、それなりにたくさんの材料を加工しなければならない分、加工費も高くなります。この係数といえば、非常に敏感な数値で、メーカー規模や加工難易度によって、0.5~3の範囲内に幅広く分布されます。例え係数が1としても、材料費が30万円なら、加工費も30万円x1=30万円規模になるので、構造強度許容範囲内で合理的に材料コストを下げたいのがエンドユーザーの本音でしょう。

この理屈を知ってしまった以上、武骨に見えて実はそう強くないアングル柱は実に歯がゆい存在になります――下図をご覧ください。

アングル対角鋼管:性能同等だが、重量:重!
アングル対角鋼管:性能同等だが、重量:重!

上記例で出た柱材L-180x180x12アングルの断面積ときたら4224㎟です。弱軸方向性能の同じ仮想(薄すぎて、市販されない)角材□⁻150x150x2.8(150x150㎜四方、肉厚2.8㎜の角鋼管)はわずか1612㎟です。いわゆる、同じ長さ、同じ性能の鉄骨柱なのに、アングル柱を選んでしまったら、2.6倍以上の重量になるので、当然2.6倍以上の材料費、ついでに2.6倍以上の鋼材加工費も支払わないといけないです。この金額にご納得は頂けますかな?

実際の場合、弱軸性能があまりにも弱いため、L-180x180x12ではなく、さらにサイズアップしたL-180x180x16(厚さを12㎜から16㎜まで増加)を採用する場合多く、コスパがさらに悪化します。

同じ柱材で、アングル材と角鋼管材、これだけ差があるとは!と驚くかもしれません。

角鋼管からアングルまでの仮想変形過程
角鋼管からアングルまでの仮想変形過程

実は、これらの数値を見ずに、直感的にも説明が付けます。L-180x180x12の山形鋼は、想像して、□‐180x180x6の角鋼管を対角線に沿って平板まで潰してから、平板の中心線に沿って90度曲げてできたものに相当します。いわば、山形鋼はフラットに潰されて折れた鋼管です。生活経験上でもわかるように、潰された紙箱には強度がなく、竹や稲などの植物の茎などは全部空洞の筒で強風にも耐えられる、それらと同じように、材料断面中心を空洞化し、有限の材料をなるべく外周の皮に分布させるのが、材料を有効利用して強度を得るための知恵です。

中空筒となる竹の茎
中空筒となる竹の茎

この知恵を無視し、無理やりアングル材を柱に使い、強度が足りなければ、単純に厚みを増やす方法で補強する、これ実に不合理的・不経済的であり、コスパ性能を悪化させる原因になります。

以上をもって、うちがアングル材(山形鋼)柱を採用しない第二の理由、つまりコスパ性能が悪いとの理由をご説明いたしました。ご理解はできましたか?次回は、アングル柱によく採用される柱脚設計の視点から、うちがアングル材柱を採用しない理由について説明いたします。では、また次回まで!

友達とシェアする