施工事例19 「コ」型中庭廊下庇付き民泊ホテルコンテナハウス
今回のコンテナハウスの一番の特徴と言えば、中庭を囲む「コ」型に配列した連棟コンテナハウスに、その内縁にまた隙間なく「コ」の形で繋がった廊下庇が付いているところです。庇はコンテナ外壁と同様のコルゲート鋼板を使い、勾配が付き、雨樋を装備し、ちゃんと雨除け機能をもたらすだけでなく、外観的もシンプルでありながら粗末なく、コンテナに一層レベルアップの飾り効果をもたらすようにこだわって設計してあります。

中庭を囲むコンテナハウスのレイアウト配置を検討されている方、コンテナハウスに渡り廊下庇、縁側庇を追加しようと検討される方にとっては、有意義な内容だと存じます。ぜひご参考になってください。

案件概要
規格:長辺排水勾配屋根20HCコンテナx6台(「コ」型配列3連棟x2棟)+「コ」型縁側庇x2式
納入場所:沖縄県
納入時期:2025年4月
用途:民泊ホテル
施工範囲:コンテナ躯体+軽天下地+中国製アルミ建具
特徴:中庭を囲む「コ」の配列レイアウト、「コ」に連結した縁側庇、中国製塩ビ樹脂アウトデッキ(コンテナ内部で同梱発送)


設計経由
「コ」文字のように中庭を囲むレイアウトは、考えてみれば、コンテナハウスにとっては非常に向いているように感じます。もともと幅狭い室内空間を外の中庭の芝生や樹木、或は単なるアウトデッキに掃き出し窓越しで繋がり、室内の窮屈感が一気に取り払われます。特にアウトデッキを室内床と同レベルにして、縁側庇を付ければ、「外」と「内」の境目はさらに弱化され、渾然一体の空間になります。今回の中庭は、後者のアウトデッキでした。

コンテナ同士は、厳格に言えば連棟ではなく、各々四壁を持ち、一定の間隔をおいてあります。一組内の3台コンテナはそれぞれ寝室・リビング・トイレシャワー室で、1m幅の縁側庇廊下で繋がれています。台風や豪雨の多い沖縄にとっては、このような庇廊下が必須と言えるでしょう。




豪雨と言えば、屋根排水はなるべく中庭の中に排水しないように、コンテナの屋根は外側に向いて勾配屋根を設けてあります。このような勾配屋根は、雨水の流速が早く、水溜まりが生じにくく、沖縄のような離島で免れない付着塩分の洗浄に好条件にをもたらし、躯体の耐久性に貢献します。

「コ」文字の庇廊下も、同じ理由ですんなりの排水を実現するため、中庭向けの勾配が設けてあり、さらに複雑な勾配のあるステンレス横樋と塩ビ製竪樋を通し、組織排水が実現されています。機能的な「勾配」や「斜め」要素をそのまま曝すのは流石に見た目を損ないかねないので、これらの斜め要素を全部水平の鼻隠し面板の裏で隠せるように、設計いたしました。




また、台風のことも考えなければなりません。太平洋上で発生しうる秒速46mの台風の直撃にびくともせず耐えられるように、庇は片面コンテナにボルト連結し、自由端はアングル梁と4本アングル柱を通じて、地面の基礎に繋ぎます。

庇は直線なら構造がシンプルで設計も楽ですが、「コ」文字のように曲がる途端、体感的に一気に3~4倍程の設計難度が上がります。3つの庇の柱共有構造から横樋の勾配や交差接合、鼻隠し面板の支え構造と横樋との干渉逃げ、庇本体の溶接縮みとコンテナ据付誤差の吸収、ステンレス横樋と炭素鋼本体との間の電気腐食防止、現場据付の手順要領書作成。。。本案件に費やした脳みはその8割以上がこの庇に投じられたような気がします。



設計苦戦中、「これは本(コンテナ)末(庇)転倒ではないか?」と一度戸惑いさえ感じたのですが、やり遂げて、工場内で仮組の過程を見た後、「これはやりがいがあった」と感嘆しました。「禿げたオッサン」のようにぽつねんと立つ3台寂しいコンテナがこの「コ」文字庇で繋がれた途端「カッコいい青年」に豹変したような気がしてならないからです。



前文で電気腐食と論じましたが、それは雨樋材であるステンレス鋼材と庇本体や鼻隠し面板などを構成する一般炭素鋼材の材質の差から発生する腐食現象です。簡単に言えば、炭素鋼は電子を保有する力がステンレス鋼より弱く、両者が直接触れると炭素鋼の電子がステンレス鋼に奪われ続ける結果、炭素鋼は湿気環境の中でより簡単に錆びる現象です。よって、今回は雨樋と連結する部位には、塗装の皮膜による隔離のほか、絶縁樹脂製ワッシャーを各付属ボルトやネジにセットで用意したのです。

離島コンテナハウスのコツ
建築業の人手不足と高額な運送費用により、離島建築が高いのはご存知の通りです。人件費・材料費の安いところで建築を作り、そして丸ごと離島に送り込むことで、高額の現地作業が減らせ、輸送される建築物の中に、なるべく多くの材料を積み込めば、輸送費もある意味で節約できます。輸送できる建築物とは、言うまでもなく、コンテナハウスのことです。

今回も、コンテナハウスの躯体のみならず、内部のLGS軽天下地施工が中国工場で済ませ、建具(断熱仕様アルミサッシ・ドア)も装着した状態で輸送しました。また、コンテナの内部空間も利用して、中庭に使う大量のアウトデッキ部材、前文で言及した廊下庇の関連部品も全部積み込んで固定して、丸ごと那覇港まで輸送したのです。


施主様は、現地人件費を節約するため、内装工事までご自分で行うらしいです。敬服の至りでございます。
コンテナハウス工場内生産風景
現地竣工の写真はまた後日改めて掲載いたしますが、とりあえず例の通り、工場内の生産風景を展示いたします。



















では、また次回までお楽しみください!

