うちのコンテナハウスなぜ山形鋼(アングル)柱を使わないのか?(その3――柱脚篇)

山形鋼(アングル)柱のJIS鋼材建築用コンテナハウス、流行ってきた年月が既に長いです。開放的な材料断面のおかげで、外側からコンテナ間の上下・左右連結もやりやすい、装飾カバーも付けやすい、基礎アンカーボルトとの締結もやりやすい、おまけに審査機関にうまく口説けば建築基準法の「仕様規定」に帰属させ、構造計算も免れます。一見したところ、メリットばかりで、コンテナハウスの柱としてほぼこのアングル柱以外はもうありえません。そして、一時期、コンテナハウスの四隅にアングル(山形鋼)柱の応用にめぐって、各社が特許出願の争いが狂熱になったことさえもありました。(が、創造性が欠いている故特許庁にほぼ全部拒絶されたらしいです。)

Uni-Konの山形鋼(アングル)柱コンテナハウス事例
Uni-Konの山形鋼(アングル)柱コンテナハウス事例

弊社は、客先の特別要求がなければ、アングル柱を採用しないです。(一般的には角パイプの柱を採用しております。)要求されても、使用しないように忠告します。(「どうしてもほしい」という施主様には、施主様のご意志を尊重し、構造検証合格した前提で、ご提供はできます。上図と下図は弊社のアングル柱の納入例一部です。)特許のしがらみがあるわけでもないのに、メリットばかりを持っているアングル柱を、なぜ使わないのか?と疑問を感じていらっしゃるかもしれません。実は、アングル柱コンテナハウスには、ちょっとしたデメリットが数点あります。本文は、そのデメリット、つまり弊社のコンテナハウスがなるべくアングル柱を避けている理由をご紹介いたします。内容が多いため、3回に分けてご紹介いたします。今回はその3回目――柱脚についてです。(最初からお読みになりたい方は、1回目――強度篇までお越しください)

では、強度も優れていない(強度篇)、コスパ性もよくない(コスパ篇)アングル柱ですが、なぜ結構採用されるのでしょうか?その理由を説明するのに、コンテナハウスの柱脚と「仕様規定」に触れなければなりません。

1.コンテナハウスの柱脚と鉄骨造の「仕様規定」

柱脚は文字通り、「柱の脚」であり、柱の下部に水平に溶接する平鋼板のことです。この鋼板脚で柱が基礎の上に踏み込むだけでなく、脚が滑らないようにまた柱が倒れないように、脚が基礎から突起するアンカーボルトにロックされるのです。そして、柱が倒れる方向は分からないので、柱脚にロックするアンカーボルトは柱中心にめぐり、周囲均等に配布することが一般的には要求されます。

しかし、コンテナハウスは一般の鉄骨造と違い、柱がコンテナ輪郭線ギリギリのところにあり、内部への延伸はともかく、コンテナ外部への延伸は物流上の寸法制限により厳しく禁じられます。

輸送できなければ、コンテナハウスの意味がなくなるので、敢えて「アンカーボルトが柱中心にめぐり、周囲均等に配布すること」を背いていかなければなりません。これは別に違法行為ではなく、例外で「一般仕様規定」と違った方式を採用するなら、その安全性を構造計算で証明しなさいとなるだけです。法律上も理屈上も当たり前のことで、何の問題もありません。

2.アングル柱と4号建築

建築基準法上、規模が小さく、構造が単純で、防火地域でもなく、用途が旅館や病院のような「不特定多数」の人に大いに利用されるものでもない建築を「4号建築」に属し、建築確認申請の手続きがある程度簡略できます。鉄骨造の場合、「規模が小さい」の境目は200平米以内、「構造が単純」の条件は平屋であること、そして簡略できるのは、建築士が設計した場合、上記鉄骨造の「一般仕様規定」を全部守れば、構造計算しなくてもよいとのことです。

これは、建築士にとっては大喜びです。ややこしい構造計算をチビ案件ごとにいちいち構造先生に頼んで計算しなくてもいい(申請を担当する建築士は通常は意匠建築士であり、構造建築士ではない)、便利なものです。しかし、そうなるには、「一般仕様規定」を全部守るという前提があり、前述コンテナハウスの柱脚ときたら、困ったものです。

コンテナハウスを「4号建築」に属させ、構造計算をしないために、色々悩んだ結果、アングル柱が誕生しました。柱脚が外部に延伸できないなら、柱断面内部にアンカーボルトを分布すればよい。柱内部でボルト締めができないといけないので、パイプのような閉鎖断面ではなく、開放断面の鋼材にすればよい。H型鋼はウエブが邪魔で、溝形鋼はサイズが小さくて、妥当な選は。。。山形鋼(アングル)だ!アングル柱なら、「仕様規定」を全部クリアできる、アングル柱なら、構造計算しなくてもよい!アングル柱最高!と、発案者は大躍起しました。

3.誰のためのアングル柱?

輸送規定と建築規定、よくこんなに複雑なジレンマの間にアングル柱という打開策を探り出したなあ!と消費者であるあなたも驚嘆するでしょう。むしろ、このような企業努力と独創発想に感心するところです。

しかし、ここで、ちょっと待っていただきたい、この発想の流れについてもう一度じっくり考えてください。この発想は一体、誰のためにあったのでしょうか?申請時、構造計算しなくてもよい、これは消費者にとっては本当に何かのメリットがあるのでしょうか?まだ不明なら、以下の数点についてお考え下さい。

1) アンカーボルト数

無計算のためにアングル柱を採用した場合、仕様規定通りでは、柱ごとに4本のM16アンカーボルトが採用されます。これらのアンカーボルトは弁当箱のような柱脚面積(168×168、㎜)に無理やり凝集され、20Ftコンテナ4柱、40Ftコンテナ6柱/8柱だから、1個コンテナを固定するのに、20Ft16本、40Ft24本或は32本のアンカーボルトをコンクリート基礎の鉄筋を組む時に全部±2.5㎜の精度で固定しなければなりません。一遍に合わせるボルト量が多いのと、コングリートを流し込む時の振動と、コンテナ溶接時の溶接線収縮など、たくさんの要因で、これは、基礎業者とコンテナメーカーにとって、どれほど大変なことなのか、素人でも想像できるでしょう。大変は大変だが、別にできないわけではありません。こういう至言があります。「世の中にできないことはない、コストが高いだけ」です。

ちなみに、構造計算する場合、コンテナのボックス筐体特性を利用し、柱脚ごとにアンカーボルト一本で済みますが。つまり、20Ftコンテナ4本、40Ftコンテナ6本/8本でよいです。

2) 材厚

構造計算しない場合、大体二つのパターンがあります。一、事故にならないように、主材材厚をともかく厚くし、丈夫にする;二、市場競争力を上げるのに、ある程度の事故リスクを覚悟の上で、材厚を経験で削る。どの道にしても、消費者は損します。一は金の損失で、二は安全の損失です。

ちなみに、構造計算すれば、材厚を根拠を揃えて、一定安全値を置いて経済性と安全性を備えて合理的に決められますが。実は、経験や法律があてにならない特殊事例がよくあります。例えば、吹き抜け構造のように、外から見れば2階ですが、中身が一階平屋である場合(法律上も平屋と見なす)、風圧力が2階同然で(2階鉄骨の場合、構造計算が必須)あっても、構造計算しないつもりでいる業者がいました。結局こちらで計算して、強度不足箇所を指摘し、初めて気づいてプランを修正したのです。

3) 柱脚自体もちょっと曖昧な部分があり

アングル柱の柱脚は「柱内部で柱中心にめぐりにアンカーボルトを均等配布する」主旨ではありますが、実はここで検討する余地があるのは、「柱中心」は一体どこなの?との問題です。アンカーボルトの均等配布は力学上の要因で決められている流れなので、ここでいう柱の中心も力学上の中心の意味を含んでいるはずだとの弊社の私見です。アングル柱の力学上の中心は、断面重心の位置にはあり、幾何学中心にはない。つまり、下図のようなアングル柱の柱脚は色々工夫して得た結果ですが、残念なことに、これでもアンカーボルトが「柱中心にめぐって均等配布」していないのです。なぜなら、柱断面がアングルになったとたん、「柱中心」が「重心位置」にズレているからです。

アングル柱の本物の中心は重心にあり
アングル柱の本物の中心は重心にあり

まあ、これは今までたくさんの申請成功事例もあり、審査機関もそこまでいちいち精査していないみたいなので、あくまで私見・雑談ですが。

話が戻りますが、あなたがコンテナハウスの消費者なら、ここまで読んで、アングル柱は誰のためにあるか、お答えできましたか?

アングル柱で、コンテナハウスを4号建築に嵌め込み、構造計算が免れ、柱材のコスパ悪化をはじめ、無闇に安全側に傾き主材材厚上げによるコストアップ(或は危険側に傾き主材材厚下げによる安全リスク背負い)、大量のアンカーボルト合わせによる高精度基礎打ち・高精度コンテナ製作でコストアップ挙句、やはり現場トラブル多発が免れない。。。諸々負担を背負っているのはあなたである消費者です。申請を担当する売り手側にとっては、無計算で申請が楽、コストアップで売り上げも高く利益も潤沢、しかも「見た目が強そう!」までもご褒美いただき、一石何鳥どころでしょうか?

最後に

以上で、うちがアングル柱を使わない理由の三、柱脚篇をご説明いたしました。弊社は、例え面倒であっても、建築は消費者にとっては生涯に渡る大事な買い物なので、きちんと使用条件に応じて構造計算し、科学的・合理的かつ経済的に主材を選定し、高コスパ性のコンテナハウスをお客様に提案していきたいとの所存でございます。

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