うちのコンテナハウスなぜ山形鋼(アングル)柱を使わないのか?(その1――強度篇)

山形鋼(アングル)柱のJIS鋼材建築用コンテナハウス、流行ってきた年月が既に長いです。開放的な材料断面のおかげで、外側からコンテナ間の上下・左右連結もやりやすい、装飾カバーも付けやすい、基礎アンカーボルトとの締結もやりやすい、おまけに審査機関にうまく口説けば建築基準法の「仕様規定」に帰属させ、構造計算も免れます。一見したところ、メリットばかりで、コンテナハウスの柱としてほぼこのアングル柱以外はもうありえません。そして、一時期、コンテナハウスの四隅にアングル(山形鋼)柱の応用にめぐって、各社が特許出願の争いが狂熱になったことさえもありました。(が、創造性が欠いている故特許庁にほぼ全部拒絶されたらしいです。)

Uni-Konの山形鋼(アングル)柱コンテナハウス事例
Uni-Konの山形鋼(アングル)柱コンテナハウス事例

弊社は、客先の特別要求がなければ、アングル柱を採用しないです。(一般的には角パイプの柱を採用しております。)要求されても、使用しないように忠告します。(「どうしてもほしい」という施主様には、施主様のご意志を尊重し、構造検証合格した前提で、ご提供はできます。上図と下図は弊社のアングル柱の納入例一部です。)特許のしがらみがあるわけでもないのに、メリットばかりを持っているアングル柱を、なぜ使わないのか?と疑問を感じていらっしゃるかもしれません。実は、アングル柱コンテナハウスには、ちょっとしたデメリットが数点あります。本文は、そのデメリット、つまり弊社のコンテナハウスがなるべくアングル柱を避けている理由をご紹介いたします。内容が多いため、3回に分けてご紹介いたします。今回はその1回目――強度についてです。

Uni-Konの山形鋼(アングル)柱コンテナハウス事例2
Uni-Konの山形鋼(アングル)柱コンテナハウス事例2(工場内鉄骨仮組検査)

アングル柱のデメリット(一):柱としては弱いから

題名を見て、驚いた方がいらっしゃると存じます。いきなり言い出したら、「アングル柱が弱い?冗談じゃない!見てよ、この目に見える分厚い鋼材!ほら!叩いてみて!わかるでしょう?」と怒られやすいです。

しかし、感情的にならず、鋼材の断面特性表を調べれば、これはすぐ把握できる事実です。例えば、アングル柱コンテナハウスによく使われる柱材であるL⁻180x180x12(等辺山形鋼、両辺とも幅180㎜で厚12㎜の分厚くでかい断面)ですが、弱軸周りの断面係数(柱材が曲げ作用に対する抵抗能力を表す指数で、大きければ大きいほど強い)がわずか78.41㎤です。なぜここで「僅か」を足さないといけないかというと、それは、この性能数値を150×150㎜の角パイプに換算すれば、パイプの厚みは「僅か」2.8㎜に相当するからです。(下図、比例同じで、左はL⁻180x180x12で断面で、右は□-150x150x2.8で、そう、直感を反しますが、この二つの断面の鋼材が曲げ強度が同じです!)

驚くべき事実:曲げ性能の等しい両鋼材
驚くべき事実:曲げ性能の等しい両鋼材

150x150x2.8㎜の角パイプ、もう本当に薄っぺらですよ。(実は150㎜幅に対し2.8㎜肉厚が薄すぎて力学上では既に不安定で、150x150x2.8㎜材料自体は市販されていません。最低規格でも150x150x3.2㎜になります)そう、左の「めちゃくちゃ強い~!」印象を与えたアングル柱は、実はある方向からの曲げ作用に対しては、ほんの弱虫です。

で、どの方向から?とお気になりでしたら、はい、この方向です。

山形鋼(アングル)弱軸周りの曲げ
山形鋼(アングル)弱軸周りの曲げ

無論、正確に言えば、強軸まわりはアングル柱はそれなりに頑丈ですが、あいにく、我々は地震や台風に対して「来る時はね、必ずこの方向から来い!」などのような注文はできないので、どの方向からの曲げにも問題なく備えられることが柱の仕事です。この点で、アングルのような負荷方向によって強弱の差が大きい、つまり曲げ方向の「選り好み」の強い材料は実はとても柱材としては不向きです。

山形鋼(アングル)柱の先に降伏する位置
弱軸回り曲げで山形鋼(アングル)柱の先に降伏する位置が「山」の頂点位置(黒になった部分)付近です。

トラス構造とラーメン構造の違い

「待ってよ、クレーンだって、電線塔だって、東京タワーだって、アングルでがんがん作ったじゃないか?それらも弱いとのこと?」とまだ疑問をお持ちかもしれません。

その答えは、構造の種類にあります。クレーン、電線塔、東京タワーのいずれも、無数三角形の網目で構成された立体的な網構造、所謂「トラス構造」を採用しています。トラス構造の一大特徴として、構造の中で働いている軸材はみんな巧みに助け合いをして、引っ張り力と支持力だけを受け、軸材独自で曲げ作用を受けないです。つまり、アングル材の「曲げ作用」に対する苦手はトラス構造の中で働くおかげで、うまく避けられているのです。

東京タワーのトラス構造
東京タワーはトラス構造です

しかし、コンテナハウスの構造は違います。本サイトでもよく言及したのですが、コンテナハウスは「ラーメン構造」です。ラーメン構造の中の柱は、ほかの材からの助け合いに期待できず、自らすべてを背負わなけれなりません。上部構造の鉛直荷重を受けるだけではなく、台風や地震などの水平作用が来るときの「曲げ」作用にも耐えなければならないです。ここにきて、前述した弱軸方向からの曲げに弱いとのデメリットが既に致命的です。

Uni-Konの山形鋼(アングル)柱コンテナハウス事例2
Uni-Konの山形鋼(アングル)柱コンテナハウス事例2

以上で、うちのコンテナハウスなぜ山形鋼(アングル)柱を使わないのか?の第1デメリットをご紹介いたしました。ご理解いただけましたか?次回は、山形鋼(アングル)柱の第2デメリットーコスト面、第2篇――コスパの悪さから続いてご説明いたします。ご期待くださいませ!

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